すまいをトーク〜すまい再発見!〜

最新情報

2024年度スケジュール発表
スケジュールページを更新いたしました。2024年度の日程表と各講座の詳細は下記PDFファイルでもご確認いただけます!

すまいをトーク2024年度パンフレット

次回講座のお知らせ
2024/4/7(日)
12:20-17:20
近江・大津に“芭蕉の足跡”を巡る!
→詳細はこちら

<終了しました>
2024/3/14(木)
18:30-20:30
堺の厳しい丁稚奉公を卒業したフランス人刃物師の話
→レポートをアップしました

すまいをトークって?
「すまいをトーク」はどなたでもご参加いただける住まいの勉強会です。受講生は随時募集中、単回参加も大歓迎です!
勉強会内容はスケジュールのページを、受講方法についてはお申し込みとお問い合わせのページをご覧ください。

マンスリーレポート

【第12回】2024年3月14日(木) 堺の厳しい丁稚奉公を卒業したフランス人刃物師の話

今年度最後の講座は、堺の鍛冶屋で厳しい丁稚奉公を卒業して、現在は「公益財団法人堺市産業振興センター(堺伝承館)」の職員として、世界中の人たちに堺刃物の素晴らしさを伝道しているエリック・シュヴァリエさんのお話です。私自身、刃物全般に興味があるので大変楽しみにしていました。

エリックさんは、フランスのパリ郊外の田舎町で生まれ育った34歳。友人の影響で日本に興味を持ち、名門ソルボンヌ大学日本学部で日本の歴史・文化を学ばれました。
大学卒業後、実際の日本を見たいと来日。以前から古墳に強い興味を持っておられたことから、
世界遺産にもなっている百舌鳥・古市古墳群のある堺市に来られました。そこで、名門鋏鍛冶「佐助」と出会い弟子入りされ、5年間、掃除、炭切り、神棚のお世話、調理等々丁稚奉公をされました。鍛冶の練習は奉公仕事を終えた夜間に見よう見まねで行っていたとのことです。何故日本の若者でも嫌がる厳しい修行に飛び込み、そして務め終えたのでしょうか。お話をお聞きして分かったのは、エリックさんが日本の伝統や文化を大切に思い、守って行きたいというとても強い信念・情熱をお持ちになっておられるからだと思いました。フランスにも多くの素晴らしい伝統・文化が伝えられているのですが、悲しいかな時代とともにどんどん廃れあるいは消滅してしまったと嘆いておられました。このところのグローバル化で国境を越えて、人、物、情報、文化、考え方等々が流入し、その国の独自の伝統・文化がどんどん失われています。エリックさんのふるさとに帰ると、元から住んでいるフランス人はごく少数で殆どが移民をはじめとする他国から流入してきた人たちで占められてしまったそうです。また、フランスにも素晴らしい鍛冶文化があったのに、EUが安全のためという理由で十把ひとからげに法律の網をかけ、鍛冶はグローブをはめ、ゴーグルやブーツを付けなければならなくなり、まともな製品を作りづらくなり、また職人のやる気も削いでしまったそうです。それに比べ、日本は独自の伝統・文化がまだ比較的良く保たれている、フランスのようなことにならないようになんとしても守りたいと熱い心で語ってくれました。お聞きしていて、日本人よりも日本の心をしっかりとお持ちで、我々日本人が反対に大いに反省し学ばなければいけないと思わされました。

さて包丁のお話です。今、日本の板前の9割が堺の包丁を使っているとのこと、また、世界中の料理人から絶大なる信頼を得ているそうですが、何故そこまで堺の包丁がプロに愛されるのでしょうか。それは、古墳築造で培われた金属加工技術から始まり、鉄砲伝来からの鉄砲鍛冶、南蛮貿易で輸入された煙草包丁を源流とした各種包丁の誕生と、延々と堺の地で培われた鍛冶技術が、進化しながら今に至っているからです。更には堺の包丁生産が完全分業制で各分野のプロが誇りと責任をもって素晴らしい仕事をしているからなのです。よく切れるのはもちろんのことです。

包丁には大きく分けて、洋包丁と和包丁の二種類があります。洋包丁は両刃で、ステンレス製の物と、鋼をステンレスで挟む割り込み包丁が多く、和包丁は片刃で、鋼と軟鉄を合わせた物が多いです。洋包丁は、錆びにくいのでメンテナンスが楽ですが、研いでも鋭い刃が付きにくく、また切れ味も早く落ちます。反対に和包丁は錆びますが、研ぎ易く、鋭い刃がつき更には永切れ(切れ味が落ちるスピードが緩やか)するのです。多少の錆はむしろ体に良い位です。個人的には、普段使いには鋼を挟んだ両刃包丁、魚を調理するには何と言っても片刃包丁が断然良いと思います。研ぎは大事です。いくら良い包丁でも研がなければ切れませんから。研ぎは一定の角度を保ち、引く行程よりも押す行程に力を入れるのがコツ、また研ぎの終わりには角度を少しだけ付けて(上げて)数回研ぐことでカエリ(鋼が反対側に薄くめくれること)が出ます。指で触れると分かりますので、カエリが出たら刃を反対にしてスッと引いて、あるいはジーパンのような荒い生地でこすってカエリを取れば完了です。よく切れる包丁は調理を楽にし食材を生かしますので、皆さん、ちゃんと造られた包丁を使い、包丁は時々は研ぎましょうね。

最後にあらためて、本日のお話で特に感銘を受けたのは、エリックさんの伝統・文化に対する熱い気持ちと実際にそれを伝えようと努力されているその姿勢でした。
エリックさん頑張ってください。ありがとうございました。
(報告:並平 文清)

すまいをトーク すまいをトーク すまいをトーク すまいをトーク すまいをトーク すまいをトーク すまいをトーク
すまいをトークへメール