すまいをトーク〜すまい再発見!〜

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リフォームで新築を超えられるのか!? 〜住み慣れた場所で、新たな生活スタイルを求めて〜

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京町家の魅力
→レポートをアップいたしました!

新聞で紹介されました!
2018年4月20日の読売新聞で、すまいをトークの活動が紹介されました!
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すまいをトークって?
「すまいをトーク」はどなたでもご参加いただける住まいの勉強会です。受講生は随時募集中、単回参加も大歓迎です!
勉強会内容はスケジュールのページを、受講方法についてはお申し込みとお問い合わせのページをご覧ください。

マンスリーレポート

◆ 第11回 京町家の魅力

 今回の講師は、京町家に憧れて昭和初期に建てられた物件を購入し、現代生活にマッチした改修を施して暮らしておられる大阪市立大名誉教授、伊藤正人さんです。実際の体験に裏打ちされたお話なので、興味津々に聞かせて頂きました。
 
1.京町家の歴史と種類について
(1) その成り立ち
平安京の条坊制で区画された地域は、公家と貴族のためだけのもので、庶民はその外で生活するほかありませんでした。その都市の中の碁盤の目のような道路は、幅が数十メートルもある広場のような空間でした。時が経ち、その道路の端に長大な土塀に沿って家を建てて住みついたのが、そもそもの始まりだそうです。
(2) 京町家の種類
必ず道に沿って平入りの造りになっています。道に面して本二階になっているか中二階になっているか、格子の形はどうなっているのか等の特徴で、時代や商売が推定されます。 
(3) 行動建築学について
行動建築学とは、家屋を居住者の生活上の要請と環境要因(時代環境、地域的環境等)との相互作用の産物であるとみなす新たな学際的研究領域だそうです。そうした相互作用から生まれた家屋の典型例が京都の町家とのこと。
この考えからすると、有名な安藤忠雄先生設計の住宅は理にかなっているとは言い難く、そこで生活する者にとって決して住み易い住宅とは言えないのではないかとの思いがあるとのこと。小生もかの先生の作品を見ると、住み易さよりもデザインと才気に走った印象を受けますが、皆さんはいかがでしょうか。

2.京町家の特徴について
(1) うなぎの寝床
間口が狭く奥行きがあります。江戸時代以前の税金対策から生まれた形です。また、江戸時代には幕府の建築規制が厳しく、表は中二階建てにし、室内も桧柱や長押は禁止されていたそうです。表側は商売や手工業に使用し、通り庭に沿って居住スペースが連続、奥座敷から庭が眺められるという間取りが代表的なものです。奥の便所から糞尿を担いで運搬するために通り庭は重要な役割を果たしていたそうです。
(2) 屋根
隣との境界のケラバは、棟の高い方の屋根が低い方の屋根を覆うように越境しています。 一般的には問題がありそうな建て方ですが、雨対策上、必然的に出来上がった形で、京都では不文律として当たり前のことだそうです。また、軒の末端は一文字瓦になっていることが多く特徴の一つになっています。
(3) 通り庭の吹き抜け構造
通り庭の上部空間は屋根までの吹き抜けで、太い梁の上に更に少し細めの構造材が縦横に組まれていますが、これは構造的な役割よりも意匠としてのそれが大きいそうです。通り庭の空間は冬場、暖房が利きにくく、とても寒いそうです。
(4) 「京町家原理主義」批判
京町家は、その当初より昭和初期の終焉期まで時代により少しずつ変化してきています。そしてそれは建築行動学から見ても必然的なものであり、「京町家とはこの様なものでなければならない」というような原理主義的主張は、よろしくないのではないかと仰っています。
(5) 京町家の危機的状況
平成22年度調査では48000戸あった京町家は、現在40000戸までに減少しています。この調子で減り続ければ、50年後には消滅しているかもしれません。最近の傾向としては、インバウンドの急増で宿泊施設が足らず、京町屋を取り壊して狭小スペースの宿泊施設を建設するという流れが、町家減少に拍車をかけているそうです。京町屋が建ち並ぶしっとりとした日本的景観を求めて観光客が来るのに、とても皮肉な現象です。
このような状況に危機感を覚えた心ある女性と行政が手を組み「京都市景観・まちづくりセンター」という法人がつくられ、改修の補助や相談等の活動を行っているそうです。この活動のお蔭で講師の家の改修に補助が付き、京町家の解体は届け出制になりました。

3.京町家再生の考え方
平成23年に「京都市景観・まちづくりセンター」の補助を受けて改修した講師の自宅を例に、具体的な話をしてくださいました。
改修にあたっての基本的な考え方は、
(1) 現代生活にマッチする改修
(2) 残す部分と改修する部分をきちんと分ける
というものです。
(1) については、もともとあった10畳大の地下室(元はお茶の販売業で、保管倉庫だったと思われる)を音楽室兼書庫にしたり、内壁に断熱材とインナーサッシを入れたり、通り庭に床を張ってシステムキッチンを入れたりと、住み易いように改修しておられます。少し驚いたのですが、エアコンは8台も設置しておられるそうです。
(2) については、本玄関、奥の間、座敷飾り等はそのまま残し、看板建築様式だった表は元の町家風に改修しておられます。

4.町屋暮らしの愉しみ
その醍醐味は、四季のうつろいを肌で感じ、それを楽しむということに尽きるようです。
具体的にいうと、
○ 座敷があること
○ 座敷飾り(床の間含む)があること
○ 奥庭があること
が大事なことで、それらを有機的に生かして日々の生活を楽しむことが肝要とのこと。
もう少し具体的にいえば、
○ 座敷の障子、ふすまを夏場、簾に取り換え目を涼ませる。
○ 座敷飾りには、季節を先取りする掛け軸や、お気に入りの調度品、花を飾って目と心を楽しませる。
○ 庭を手入れし、季節により表情を変える様子を座敷から眺めて、ひと時のくつろぎにほっこりする等々・・・。
講師はとても満足されておられる様子でした。

5.京町家の影の部分
テレビや本では紹介されない影の部分もお話しされました。
(1) 小動物(へび、猫、ネズミ等)との付き合い
これについては、講師のご専門である行動心理学の観点から、それぞれの動物が嫌がることをするのが最も効果的とのこと。人も同じですが、自分が取った行動の結果が良ければ以後も同じことをしますが、そのことでいやな思いをすれば、次からは同じことをしないというものです。この考え方で対策を取ると、市販品よりも効果がある(ことがある)とのことです。
(2) 建具の不具合
ちょっとした仕事では職人さんはなかなか来てくれないので、調整や修理は出来るだけ自分でやるしかないようです。
(3) 隣家とのケラバを切られる
実際お隣さんの町家が解体され(売りに出たら買い取ろうと計画されていたそうですが)ケラバが切られて、小さなホテルが建ったのですが、その結果、玄関土間に雨水が侵入してきたそうです。ケラバの重要性を実感したとのことです。

6.最後に
季節の移ろいを感じ、自然と神様を敬い、それらに守られ共に暮らすことが、京町家に暮らす心得であり、醍醐味でもあるようです。
講義を聞き終え、奈良の山奥に古民家を購入した小生にとっても、確と心得るべきことと深く首肯したのでありました。(報告者:並平 文清)

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