すまいをトーク〜すまい再発見!〜

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次回講座のお知らせ
2024/9/12(木)
18:30-20:30
阪神間モダニズム建築と文学
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<終了しました>
2024/8/8(木)
18:30-20:30
今昔館の住まい学習
→レポートアップしました!

2024年度スケジュール発表
スケジュールページを更新いたしました。2024年度の日程表と各講座の詳細は下記PDFファイルでもご確認いただけます!

すまいをトーク2024年度パンフレット

すまいをトークって?
「すまいをトーク」はどなたでもご参加いただける住まいの勉強会です。受講生は随時募集中、単回参加も大歓迎です!
勉強会内容はスケジュールのページを、受講方法についてはお申し込みとお問い合わせのページをご覧ください。

マンスリーレポート

【第5回】 2024年8月8日(木) 今昔館の住まい学習

「大阪くらしの今昔館」では、住まいの歴史と文化をテーマとし、江戸から昭和にかけての大坂(大阪)の町並みと暮らしを実物大の建物・模型・資料などで直に体験することができます。
なにわ町家の歳時記は、天保初年(1830年頃)の大坂の町並みを各種の文献・絵画資料・指図・現場遺構などの調査に基づいて復元。町家の他に、街の構成や仕組みなども綿密に再現し、施工は伝統的工法によります。
全て“ほんまもん”の町家であり、古民家遺構が少ない江戸期大坂を伝える貴重な資料といえるでしょう。
来館者は江戸期の街を自由に闊歩し、時刻・季節の移り変わりや町の雑踏などを体感できます。また、年間を通じて上方舞・地歌・琴・落語などの古典芸能上演、お茶会・復元料理の試食会、伝統的建築技術の実演などを催しています。各種催しを通じて、なにわ町家の暮らしと文化にどっぷり浸ることになります。

住まい情報センター研修室を講座(座学)に活用するようになって、久しくなります。そこで、17期は「大阪くらしの今昔館」前館長・谷直樹さん、18期は現館長・増井正哉さんにご講演戴き、「体験型学習のそれなりの成果は得られたのではないか?」と自負しています。
さて、今期(第19期)の講師は、若い学芸員・服部麻衣さんです。酷暑が祟ってか受講生は些か少なかったのは心残りですが、60〜80代を主体とする我々講座生からすれば、明らかに一回りも二回りも若い世代です。 とても新鮮な気分で受講しました。持続可能な講座目指して、これからも若い講師も重用して行きます。
先ずは彼女の自己紹介から始まり、今昔館の概要・近年の動向・これまでの取組み等など、主にソフト面を軸に今までとは少し目線を変えて一通りの解説・説明などを戴きました。また、今昔館が健全に永続するためには、
国内外の来客を問わず、これからのバリアフリーやボランティアへの柔軟な対応など、問題点は多々あるようでした。僕には、「平等から公平へ!」 のキャッチ・コピーがとても印象的でした。
また、訪日外国人にとっては、館内での着物着用だけでなく、「畳の上に直に横たわる」体験こそ貴重です。これぞ「屋内では下足を脱ぐ」未知の文化との遭遇・理解であるといえるでしょう。畳は単なる床材ではなく、衣類や家具同様、江戸期の日本人には必要欠くべからざる生活上の道具というべきでしょうか!
服部麻衣さん!貴女の熱の籠った講義、懇親会やアンケートでも頗る好評でしたよ!

都心部のオフィス街は、「一街区一建物」が理想です。19世紀後半、ナポレオン3世やオスマン知事らによる花の都・パリ大改造や、東京駅・皇居間の大手町オフィス街のような!
しかし、商都・大阪を南北に貫く・御堂筋沿いの一等地でも、一街区に複数の建物が観られます。商都・大阪の中核を成す船場・島之内地区などは、太閤秀吉以来の古い(道路・下水など)が今なお健在で、東西を走る<背割り下水(公有地)>が街路と街路の中間にあり、街並みの不燃化(木造からRC造へ)に伴い、些か歪な都市景観を成しています。御堂筋だけを正面に見据えたファサード建築の羅列でしょうか!
裏表のない一街区一建物の日生本社ビルなどは、例外中の例外でしょう。御堂筋都市景観のキー・ワードは、安土桃山期から連綿と受け継がれてきた「<背割り下水>の存在にある」 といっても過言ではありません。

先の戦争で、組織的空襲のなかった京都の古民家が何かと注目されていますが、なにわ町家は明らかに京町家の発展(進化)系にあります。秀吉が計画した城下町・大坂の<背割り下水>の存在が、なによりの証しです。<背割り下水>は長浜にもあり、長浜もかつては秀吉の城下町でした。<背割り下水>は、優れた都市計画家でもあった秀吉の知恵の結晶なのかも!?
平城京・平安京などの古代都市には、<背割り下水>はありません。京町家の鰻の寝床を貫く「土間(通り庭)」 は、汚物(屎尿)を外に運び出す裏動線を兼ねていました。口と肛門が同一の棘皮生物(雲丹・海鼠など)ですよね、これでは!人と汚物が決して交わらないなにわ町家こそ、“おもてなし”の心ではないでしょうか!
しかし、江戸期の復元町並み“大坂町三丁目”には、<背割り下水>はありません。これぞ、痛恨の極み! 「大阪くらしの今昔館」 は、<背割り下水>の効用をもっと懇切丁寧に解説すべきではないでしょうか!?
(報告:運営委員 牧 彰)

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