◆ 2015年度 第9回 伝統構法 木組み建築モデル 〜木組みの技術と仕事〜 【12月17日実施】
12月は、一昨年末トリッキーな階段で講師デビューされた柴田泰行さんの本格的な座学でした。
柴田さんは富山国際職藝学院(*)卒業後2004年(株)梅田工務店入社。会の運営委員の梅田誠亮さんのご薫董を受け、現在迄、大工の道一筋に精進されている(特に数寄屋に傾倒)若い大工さんです。
今回は、学院の卒業制作課題だったそうです。当時、柴田さんは現場に出ていらしたので、その完成は叶わず、卒業10年を期して制作しようと思いテーマにされました。
(*)富山国際職藝学院
新しい時代の大工と庭師(大工・家具・建具・造園・ガーデニングのプロ)育成を目的の専門学校。
温故知新をモットーに“結”の力をもって、家づくり街づくりの創造を目指す。
学院は尾崎俊雄名誉学院長(*1)、関東の有名だった故・宮大工田中文男棟梁(*2)、富山の大工の島崎秀雄棟梁(*3)はじめ地元八尾(ヤツオ)町で活躍している大工と庭師中心でつくった学校。
(*1)尾崎俊雄氏
早大名誉教授、同理工学部建築科卒、博士課程終了。日本建築学会会長・日本学術会議会員など歴任。完成リサイクル住宅未利用エネルギー利用・ヒートアイランド現象解明・地球環境問題の緒課題・プロジェクトXに取り組む。
(*2)宮大工田中文男棟梁
文化財建造物修理復元や社寺・住宅あらゆる建築を手掛け、幅広い知識と理論重視で学者棟梁と呼ばれた。
(*3)大工島崎秀雄棟梁
オーバーマイスター。富山では有名な棟梁、島崎工務店代表。古材活用自然素材による住まい作りを実践。木造建築の職藝教育に携わり、手仕事と基礎技能の指導。古民家再生等でダッシュ村にも出演(アランッ!あのトキオの器用な山口君のお師匠様ですか)。
![]() |
![]() |
![]() |
授業は実技から始まり、二週間ほどはひたすらノミ研ぎ、それができるとさし金と墨さし(*)を使い、材木に簡単な直線を引く練習に進む。学院は、前述の田中文男棟梁や島崎秀雄棟梁など伝統構法で家作りする棟梁から直接学ぶことが出来、それはとても貴重な体験で大変良かった。
(*)墨さし:墨汁をつけて墨付けする竹の筆。真竹を使用。割る前に元と末を確認の印を付ける。元のほうが墨を良く吸い上げ、長く墨付けできる故。8寸(240mm)の6分(18mm)程大きさ。4分(12mm)の幅で48枚程に割る。竹の質により使いやすさが全く違う。
![]() |
![]() |
《 閑話休題 》
〜ある現場の棟梁からの話。
見学した生徒が棟梁に墨付けが難しいと言いました。
棟梁は「墨刺しを多く割りなさい、良い墨刺しを使えば、墨付けが楽しくなって上達するよ」とアドバイス。
成る程、深いな〜と思いました。普通墨付けがわからないときは、この本に書いてるとか、実際に何度も練習しなさいとかアドバイスするけど、そうじゃなくて良い墨は、良い墨刺しからなんですね。
言われてみれば、その通りだと思いました。
コンピュータで墨付け行い、機械で加工するプレカットはともかく、最近は手刻みの棟梁でも、金属製の墨刺しだったり、マジックみたいなのなど多数あります。しかし、できれば昔ながらの竹で作った墨さしで墨付けを行う大工さんが後世にまで、残ってほしいものですね。(by ゜梅田)〜
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
今日は図面通り木取り(*1)、墨付け(*2)をして刻み(*3)終わった材料が30本程あります。これで建物を組み立てます。伝統構法で凄いのは芯墨(*4)です。芯墨は必ずしも材の中心に付けるわけではないが、今回の墨付けの芯墨は材木の中心に付けている。(例外あり)
もう一つ重要なのは検棹(*5)です。家一軒に一本、現場で作り、足固と桁の高さ等々を書き入れる。違う場所で、違う大工がこの検棹を使い木取り・墨付け・刻み終わった材とでも、家一軒組み立てられるのです。墨付けにはさし金と墨さしを使いますが、細いペンとかシャープペンでは、さし金との間に隙間ができる。伝統構法の大工はそれを許さない程の精度を求め、墨付、刻みをしている。それ故、伝統構法で建てられたお寺や塔、古い建物は精度を保ち千年以上建っているものもある。
墨さしは、一度墨壷(*6)で墨を含ませると材の一面全て墨付け出来るものが良い。
(*1)木取り
大きな材を質(タチ)と歩留まりを考えカットして建築用材にする作業。柱は必ず木の根元を下にすること。木目のある材を横に使う場合、山形の方を上にする。反対はダレ木(モク)と言われる。材は経年変化で木目の通り曲がり荷重も懸かる故、撓みは大きくなる。その上垂れている様な印象を与え良くない。
また板材にしたときは、木表(キオモテ)という樹表に近いほうを見える部分(見付き)に使う。木裏(キウラ)に比べると、赤身は少ないが、素直な面である。木目の出来具合から水はけが良い。節が少ないことから、木表を見付き面にする例が多い。
(*2)墨付け
材木を加工する時の目印。日本全国共通の記号や線の引き方で、これを基に材木を加工する。芯墨・各部の高さ・切り墨・ホゾ(オス・メス)・ひかり付け・番付・間違い訂正墨
・切り墨:書いてある部分をカット
・ホゾ(女木):書かれた四角の内側にホゾを掘る
・ホゾ(男木):孔を開けたホゾに入れる木の部分を掘る
・番付:木の住所の番地の様なもの。柱は全て手前に。柱の手前の土台は、縦書きで、柱の左右の土台は横書き。同じ、例えば《い一》などの記号を書く。番付を記す際には文字の方向を揃える。それにより柱の向き、土台の方向を確認出来るので作業効率が上がる。
・ひかり付け
・丸太等不規則な形に合わせる
・間違い訂正のものもある(名称不明らしい???)
(*3)刻み
墨付けに従いノミや鋸等で仕口や継手など、材同士が緊密に組合わさる様に凹凸(オウトツ)の加工を施すこと
(*)仕口
材同士を角度(概ね直角)を付け接合する木組
・渡り腮(アゴ)
梁桁など、横架材が十字に交差する際に使用する仕口。組み合わせは単純だが水平力に対して強く、粘りを発揮。一本の材を他の材の上にのせる日本古来の仕口方法で、上下になる材にそれぞれ溝を作り互いに嵌め込んで組む。
・引独鈷(ヒキドッコ)
通しでない雇いほぞを柱とを蟻で接合。継手・仕口・雇い材を引独鈷という。
(*)継手
材同士を水平方向に真っ直ぐ接合する木組
・金輪継手(カナワツギテ)
主に梁を継ぐ時に用いる継手で、噛み合う様に加工した両方の梁を接合し、栓で止める。地方により少しずつ違う。
・追掛大栓継(オイカケダイセンツギ)
金輪継手に似た継手接合部分に「目違い」という少し出っ張った部分を施すことで、1つの込栓でも捻れに強い継手になる。縦に段形殺ぎを付けて継ぐので上端と下端に殺き肌ができ、両側面は垂直に胴着線が密着し男木を上から滑り込ませ堅木の大栓を両側の中央に打ち込み、接合部分の表面積を大きく取る。絶対に強い継手。
・大入れ蟻落とし
横架材同士を組み合わせる継手。一方の材の断面全部を差し込む継手を使用。これを大入れ蟻落としと言い、横揺れに抵抗力がある。
(*4)芯墨(しんずみ)
部材が納まった時に、中心となる位置に印す墨のこと。部材そのものの中心とは限らず、完成時の中心と考えたほうが良いかも知れない。Zの崩れた様な記号。
(*5)検棹(竿) (けんざお)
一軒の住宅建築の基準になる物差し。細い角材を用いて住宅毎に現場でつくり、墨付けに使用する。検棹の4面には尺寸法以外に、各部の高さを記入しておき、工事中はそれが高さの物差しとなる。完成後も、小屋(裏)などに置いておき、増改築の際に使う。建物と同じ年齢を経ているため、同じ伸び縮みを経験している。近年、プレカットになってしまったので、検棹は用いられなくななった。
同義語=尺杖(しゃくづえ)
(*6)墨壷
組み立て開始:資料2枚目の図面に、下から、い・ろ・は、右から、一・二・三、と記入して、材料の中からその番付を見て土台と柱を選び、組み立てて行きます。
・材選び・足固・柱の組立
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |